ブルワー・インタビュー 第1号
東京ディズニーリゾートのお膝元、舞浜。舞浜駅前に広がる複合型商業施設、イクスピアリの4階にあるレストラン『舞浜地ビール工房 ロティズ・ハウス』。ここで舞浜の地ビール『ハーヴェスト・ムーン』が生み出されています。
まず、園田さんはどういった経緯でブルワー(醸造者)になられたのでしょうか?
![]() 大学生の頃は、ビールってどういうイメージでしたか? 私が大学3年生だった時、ちょうどアサヒスーパードライが発売されて、他のメーカーさんも追随して「〜ドライ」という商品を出した、いわゆる『ドライ戦争』があったんですよ。それで、みんなで学校の側に下宿している友達の家に集まって、「〜ドライ」を全部買ってきて飲んだりというようなことはしていたんですけど、それでビールが大好きだったというわけではなかったんですよ。 では、ビールが嫌いというわけではなかった? そういうわけではないですね。ビールは、みんなで飲みに行った時に乾杯したりする一番身近にあるお酒だという感覚で、別にビールだけが大好きというわけではなかったですね。 ブルワーになってから、そのイメージというのは変わっていきましたか? 地ビールの勉強をし始めてまずビックリしたのが、種類の多さですね。輸入ビールを取り扱っているパブなどに飲みに行ったりすると、色々なビールがありました。特に、ベルギービールが(日本に)入り始めた頃だったので、色々な味と香りや、アルコールの低いものから高いものまであったことに驚いて、すごく奥深いなって思いました。さらに、(ブルワーになる)前に比べて、ビール以外のお酒にも興味を持つようになりましたね。 普通に身近なお酒としてビールを飲んでいた環境から、醸造者として毎日ビールと向き合う環境に変わったわけですが、園田さんにとってターニングポイントとなるビール、私の人生を変えた一杯というのはありますか? ここの開業前に櫻井と二人でヨーロッパに研修旅行に行った時、チェコのプラハでウ・フレクという黒ビールだけ作っているビアレストランに出会ったんです。私がそれまで飲んでいた黒ビールって大手メーカーさんが作っているものか、ギネスのスタウトでした。(ギネスのスタウトは)今は少しライトな感じなんですけど、昔はもっと濃い〜感じのものだったんですよ。だから、苦くて、甘くて、ヘビーなイメージで、飲みにくいなって思っていました。でも、ウ・フレクの黒ビールを飲んでみたら、アルコールが8%あるんですけど、飲めちゃうんですよ!で、おかわりもできちゃう。 すごく美味しくて、こういう風に何杯も飲める黒ビールがあったらいいよね!って櫻井と話して、そういうのを作ろうと色々考えて作り上げたのが「シュバルツ」(※1)なんです。 今でも自分の作っているビールの中でシュバルツが一番好きだし、日本一だと思っています。 黒ビールを飲んだことが無かったり、ちょっと苦手と言っている方が、ここの黒ビールなら飲めるって言ってくれることが結構あるので嬉しいですよね。グループでいらっしゃったお客様がシュバルツをピッチャーで飲んでいたりすると、「やった!」と思いますね。 ※1ドイツ南東部の黒い色をしたビール。ブラックコーヒーのような甘さを抑えたテイストで、苦みと甘さのバランスが取れた飲みやすさが特徴。シュバルツとはドイツ語で「黒」の意。 http://www.ikspiari.co.jp/harvestmoon/lineup.html ![]() 園田さんが感じているビールの魅力とは何でしょうか? やっぱり気軽に楽しめるところですね。 普段接することができるビールって、まだまだ大手メーカーさんのビールじゃないですか。そうするとやっぱり、苦いとか、ちょっとオジサンが飲んでいる飲み物的なイメージがあったりするじゃないかなと思うんですね。でも、実際には世界のビールや日本の地ビールは色々な種類のものを作っているので、大手メーカーさんのだけじゃなくて、甘いのやフルーティーな香りがするものもあるということ、それを知ることができる場所とかを教えていきたいですね。 それに地ビールを若いうちに知っておくと、ちょっと他の人に語ることができますよね。ワインを語る人はたくさんいますけど、ビールのことを語る人はなかなかいませんから。 例えば、みんなでお店に行った時に「このアメリカのビールって・・・」って言ったりすると、みんな「えー!アメリカのビールってバドワイザー(※3)みたいなやつじゃないの?」って反応すると思うんです。でも、すごくホップが効いているビールだったりするじゃないですか。そういうところで、多くの方に興味をもってもらいたいなと思っているんですけど、難しいですね。なかなか。 ※2アメリカのアンハイザー・ブッシュ社が製造するビールで、世界一の販売量を誇る銘柄。軽くてすっきりとした清涼感のある飲み口が特徴。現在、日本ではキリンビールがライセンス生産と米国製バドワイザーの輸入を行っている。 http://www.budweiser.jp/main.html でも、ここ(ロティズ・ハウス)はイクスピアリという場所にあるので、観光客のお客様も、比較的若いカップルのお客様もいらっしゃるんですね。なので、地ビールを試してみようかなというチャンスは他の場所に比べたら圧倒的にあると思います。開業して10年目になるんですけど、例えばシーズンビールを作った時に、前はちょっと変わったものを作ると全っ然売れなかったんですよ。無くなるまで2、3ヶ月かかっちゃうくらいで。だけども、今は変わったものを作っても結構抵抗なく飲んでいただけるようになってきています。 やはり変化が出てきている… 変化はありますね。世間一般の流れがそうなのかわかりませんが、ここではすごく飲んでくださるようになったので、ちょっとは(地ビールの普及に)役に立っているのかなと思っています。 ![]() 最後に、大学生、とりわけ女性ですが「私、ビールって苦いから嫌い。」っていう人がすごく多いんですね。そういう方にメッセージがございましたらお願いします。 前にも言ったように、今、ビールは大手メーカーさんの以外にも、苦いだけじゃなくて、香りがあるとか甘みがあるとか色々なものがあります。でもやっぱり、誰かがそういうことを教えて勧めてあげないと、いきなり飲めるようにはならないですよね。 ハーヴェスト・ムーンでは今、シーズンビールとしてフルーティーで苦みを抑えてあるフルーツビールも出しているので、そういうものだと比較的入りやすいのではないでしょうか。ハーヴェスト・ムーンは本当に小さな醸造所なので、全国規模で広めるにはなかなか難しいですけど、地ビールの魅力を知ってもらうきっかけになるようなイベントを開催しています。なので、ぜひ参加していただければと思います。
今回のインタビューはいかがでしたでしょうか?
園田智子さんオススメ! 「ハーヴェスト・ムーンのビールが飲めるお店」 ・舞浜地ビール工房 ロティズ・ハウス【イクスピアリ4階】
【その他ビアバー】
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